無くそう、誹謗中傷。

誹謗中傷は犯罪です。しかしなくならない。その原因と解決策を裁判所の判例も交えて考えていきます。

VPNでIP偽装しても開示請求でバレる

誹謗中傷の被害を受けた際には、加害者の氏名や住所、IPアドレスなどを開示請求するのがメジャーな対応手段です。

この時、たまに、誹謗中傷の加害者であることがバレないようにVPN(Virtual Private Network)というサービスを使って発信者情報を偽装する輩がいます。

ですが、結論から言うとVPNを使っても誰が発信者なのかは特定できます

VPNを使った偽装は、特定に時間がかかるだけであって、秘匿目的ではほぼ意味がありません。

むしろ、VPNを使ってまで誹謗中傷の書き込みをしようとする悪質性から、より重い訴訟または刑罰を受けることも有り得ます

今回はVPN事業者に発信者情報開示請求するために何が要点となっているのか詳しく見ていきましょう。

vvvvvvvvvvvvvv 目次 vvvvvvvvvvvvvvvv

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VPNって何?

VPNを使うと、ネット上の住所であるIPアドレスを、別なIPアドレスに見せかけることができるようになります。

これによって、本来の端末のIPアドレスが表示されなくなるので、通常よりも発信者情報の特定が困難になります。

めちゃくちゃ極端な話をすると、

  • 火星在住の人から送られた手紙を、
  • 金星在住の人から送ったように見せる

ということができるんですね。

そうすると、手紙を送られた人は、その手紙を、金星に住んでる人から送られた手紙なんだなーと認識するわけです。

もしこの手紙の内容が誹謗中傷であるとしたら、手紙を送られた人は金星に住んでいる人を訴えることになるでしょう。

でも真犯人は火星に住んでいるので、真犯人としては、疑われているのは金星人だから、自分は訴えられることがないだろうという仕組みです。

 

ここまで見ると、真犯人を特定する余地なくない?と思われるかもしれません。

しかしこの場合、「金星在住の人が送ったように見せる手伝いをした人が間にいる」ので、この手伝いをした人に、「本当は誰が送ったんだ?」と問いただすことになります。

この手伝いをした人というのがVPN事業者というわけです。

 

ここでポイントとなるのは、VPN事業者が「開示関係役務提供者」というものに当てはまるか否かという点です。

裁判の判例を元に要点をまとまると、

  1. 誹謗中傷の加害者が、いつ、その文言を発信したのか判明していて
  2. 加害者が発信した誹謗中傷の文言に紐付いたIPアドレスが、特定のVPN事業者のものである

なら、VPN事業者は「開示関係役務提供者」であるといえ、その当時の加害者の利用情報などを開示請求の対象とできる、といった感じだそうです。

 

VPN事業者との裁判例はどのくらいあるのか?

この手の裁判結果は、裁判所の判例検索で調べると結構出てきます。

そのほとんどで、原告の訴えが認められているようです。

ITの専門家じゃないと解析できないような厳密で確実な証拠でなければ提出しても認められない、といった雰囲気ではなさそうです。

この点は、VPNを悪用されると誹謗中傷の加害者がVPNのシステムに守られてしまう、という特性を加味している部分も感じられます。

 

IP偽装をしても「IP偽装手段を使った」ということはすぐにバレる

どんな手段を使ったのかわかれば身元はすぐに割れる

発信者情報をマスクする技術をどれだけ重ねたところで、裁判で発信者情報の開示命令が出されればそのマスクは一瞬にして剥がれることになります。

発信者情報を保存しないサーバーを経由しているから大丈夫という謳い文句で運営されているVPNもありますが、サーバーを物理的に破壊しない限り、データは削除しても記憶領域に残り続けるので、技術的回避手段にはなりません。

その残ったデータを解析対象として発信者情報の開示命令が下されて身元が割れるだけなので、結局のところ、悪用するだけ無駄なんですね。

 

余談

VPNの本来の存在意義

独裁から表現や言論の自由を守るVPN

ここまで、VPNが悪者みたいな書き方をしてきました。

しかし、当然、VPNの本来の使われ方があります。

それは、表現や言論の自由を守るために使うというものです。

海外では場所によってはネット上での発言が厳しく検閲され、反政府的な書き込みをすると、特定されて逮捕されることも珍しくないのが実態です。

政治に対して意見を述べること自体は表現や言論の自由の範疇であるというのが社会通念であることから、この自由を守るために、発信者情報を秘匿するためのVPNが開発されました。

どの程度機能しているのかはその国の当事者では無いので分かりませんが、この目的でのVPN利用者は割と多いそうです。

 

ファイル共有ソフトVPN

また、TorrentやWinnyなどのファイル共有ソフトのサービスを利用するためにVPNが必要になります。

(Torrentは、今日では海賊版の温床となっている節がありますが、本来は著作権的に問題のないファイルを共有するために使われます。フリー素材とか。著作権切れのクラシック音楽とか。)

P2Pという、特定の管理サーバーを介さずに個人の端末同士で通信する方式をとると、サーバーを介さない分だけ通信が早くなるというメリットがあります。

また、たくさんの端末からジグソーパズルのピースのように少しずつデータを集めて、最後に自分の端末でひとつにまとめる仕組みなので、個々人の端末に通信負荷がそこまでかからないというメリットもあります。

ただし、P2P方式の通信ではIPアドレスがお互いに筒抜けになるという点がデメリットになっています。

これではネット上を全裸で走り回るようなものなので、VPNという服を着て個人情報を隠しているんですね。

ちなみに、仮想通貨で使われるブロックチェーンP2P方式が使われています。

 

まとめ

IT技術を悪用した誹謗中傷に対しても、法的措置を取ろうと思ったら割と簡単にできることを、ご理解いただけたかと思います。

リアルでもネット上でも何かアクションを起こせば必ず痕跡が残ります。

ネットだから隠し通せるとか、騙し通せると思ったら大間違いなんですね。

なによりも一番大事なのは、誹謗中傷しないことです。

そのためにも、こういったIT知識を身に着けておくことで、誤った知識から誹謗中傷に走ることも防げるかと思いますので、ぜひ覚えておくとよいでしょう。

また、VPNは本来、ちゃんとした利用目的のあるシステムなので、正しく使うことでその利用価値を高めることが出来ます。

昨今はTorrentと合わせて存在悪のように扱われてしまっていますが、システムの善悪を左右するのは利用者の使い方次第です。

どんなものでもそうですが、今後も本来の目的のために使われるよう、利用マナーを守って使いましょう。

誹謗中傷についての通報フォームの作り方

みなさんこんにちは。

誹謗中傷を受けた際にはどのような法律を用いて解決するかご存じでしょうか?

Twitter掲示板で誹謗中傷の書き込みをした加害者を特定するとき、

に従い、発信者情報の開示請求を行うことができます。

しかしその過程で、

  • 証拠を被害者が収集しなければならないため、被害者の負担が重い。
  • 証拠が知らないうちに隠滅されている場合が多い。
  • 裁判で有効な証拠を提示するために、確実にこの人がやりましたといえる情報が網羅されていなければならない。

など、様々な弊害が生まれます。

そのため、当サイトでは以前、「個人でもできる誹謗中傷の"予防"と"通報"方法」という記事を執筆しました。

結論をかいつまんで書くと、

  • 通報フォームを普及させて、加害者が誹謗中傷の書き込みをしないように抑止しよう。
  • そして証拠をみんなで集めよう。

ということを目的とするものです。

今回はその中から、Googleフォームの作り方を解説したいと思います。

Googleのアカウントさえあれば誰でも簡単に作成できるのがGoogleフォームの利点です。

初めてフォームを作る人もいると思いますので、詳細な作り方を解説したいと思います。

なお、その大元である個人でもできる誹謗中傷の"予防"と"通報"方法の記事を下記に掲載しますので、併せて参考にしていただけると幸いです。

protect-honor.hatenablog.com

 

*******目次*******

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通報フォームを作る利点

通報フォームを用意して、備えておくことで得られるメリットは、誹謗中傷の抑止だけではありません。

万が一それでも被害にあった際にも下記のような効果があります。

  1. 捜査が有利になる。(被害者の負担が減る)
  2. 有効な証拠を得られる確率が上がる。
  3. 常習性・悪質性が高い加害者を特定しやすくなる。

1.捜査が有利になる。(被害者の負担が減る)

本や雑誌などの紙媒体であれば、証拠の隠滅はされにくいといえます。

しかし、インターネットの情報は、非公開にする手続きをボタンひとつで簡単にできてしまいます。

ネット上の証拠はすぐに消えてしまうので、誹謗中傷の証拠集めは正に時間との戦いです。

ただでさえ誹謗中傷を受けて疲弊した状態で、さらに自身で証拠集めをするのは、ほぼ困難だと思います。

通報フォームはそんな時に、第三者から証拠データを募り、解決へのハードルを低くしてくれます。

また、被害者の気づきにくい場所で行われているネガティブキャンペーンも発見しやすくなる効果があるといえます。

 

2.有効な証拠を得られる確率が上がる。

近年では発信者情報を秘匿する技術が進歩してきました。

IPを偽装されたり、ログイン不要の掲示板を使われると、加害者を特定することが困難になります。(困難なだけで不可能ではありません。)

しかし、それはあくまでジグソーパズルのピースの手持ちが少ないというだけです。

断片的な情報でも、ピースの数が集まれば、情報から加害者を推理して、特定を早めることができます。

そのためにも、多くの通報を受けるフォームを用意して、ピースをたくさん集めることが必要になるのです。

 

3.常習性・悪質性が高い加害者を特定しやすくなる。

誹謗中傷事件の裏には、必ずといっていいほど、誹謗中傷の頻度が高い加害者がいます。

その加害者は色々なところでネガティブキャンペーンを行い、そのサイトにいるユーザーを扇動して回っていることが多く、常習性・悪質性が極めて高いといえます。

逆に言うと、様々な場所に出没してネガティブキャンペーンを行うので、多くの人の目につくんですね。

通報フォームで募った情報から、様々なサイトで誹謗中傷の書き込みをしていることがわかる証拠が得られれば、そういった悪質な加害者をより素早く特定することができます。

 

誹謗中傷についての通報フォームの作り方

ではここからは本題である、誹謗中傷についての通報フォームの作り方について、解説していきます。

実際に作成したフォームのリンクを掲載しますので、参考にしてください。

Google Forms: Sign-in(https://forms.gle/LL93PoMPmrodrjXG6)

本サイトでは、個人からの誹謗中傷、法人からの誹謗中傷の2種類から選択して送れるようにすることをお勧めしています。

必ずしもそうする必要があるわけではないので、ご自身の状況に合わせて適宜設定を変更してください。

共通の手順

手順1:Googleアカウントを取得する。

まずはGoogleアカウントを取得しましょう。

Googleの検索トップページ、または、何かを検索した際の検索結果画面からログインを選択し、新しくアカウントを作りましょう。

 

手順2:アカウントのトップ画面からGoogleフォームを選択する。

アカウントにログインしたら、ルービックキューブみたいなボタンをクリックして、機能の一覧から「Forms」を選択します。

 

 

手順3:新しいフォームを作成から「空白」を選択する。

「Forms」を開くと、いろいろなフォーム作成のテンプレートが置いてあるので、その中から作成したいものに合ったフォームを選択します。

今回は「空白」から作成していきます。

 

 

手順4:「設定タブ」を選択し、回答時のルールを設定する。

新しくフォームを立ち上げたら、画像のとおりに、まず「設定タブ」をクリックします。

すると、回答と書かれた場所の下に「メールアドレスを収集する」という項目があります。

(デフォルトで表示されていない場合は「^」をクリックすると隠れている項目を表示できます。)

これをオンにすることで、フォームに入力した人のメールアドレスがわかるので、詳しい情報のやり取りを行う際に便利です。

なお、この機能をオンにするとデフォルトで「回答のコピーを回答者に送信」の項目が「常に表示」になります。

お問い合わせフォームの自動返信のような感じにしたい場合は、このままの設定にしてください。

 

その他

回答の編集を許可する」をオフにしてください。
(確証性を確保するため)

回答を1回に制限する」をオフにしてください。
(一人から何件も通報が来ることが想定されるため)

アップロード済みファイルの合計サイズの上限」を10GBにしてください。
(要検証:アップロード済みファイルとして加算される条件がメールアドレス単位である場合が想定されるため。一人が何通も通報を送る場合にファイルサイズ上限が原因で添付できなくなる可能性がある。)

 

手順5:プレゼンテーション欄のルールを設定する。

進捗状況バーを表示」をオンにする。
(進捗を見える化することで、どのくらい入力すればよいか通報者がわかるようになります。)

質問の順序をシャッフルする」をオフにする。

確認メッセージ」を編集する。
(デフォルトだと英語のメッセージが表示されるようになっているので、案内に合わせて文章を書き替えてください。)

別の回答を送信するためのリンクを表示」をオンにする。
(連続で通報したい人の手間が省けるので、オンにしておきましょう。)

結果の概要を表示する」をオフにする。
(これがオンになっていると、どんな誹謗中傷の通報がされているのか第三者に筒抜けになります。証拠隠滅につながる可能性があるのでオフにしてください。)

すべての回答者に対して自動保存を無効にする」をオフにする。
(一度ページを閉じても、自動保存されていると、途中からやり直すことができます。ちなみに、ファイルのアップロードを必須とする場合はオンにできません。)

 

手順6:「デフォルト」の欄をすべてオフにする

デフォルトですべてのフォームの設定を変えることができる機能は、別なフォームを作るときにバグのもとになったり、設定ミスのもとになるので、すべてオフにしてください。

 

手順7:「回答タブ」を選択し、「回答を受付中」をオンにする。

「質問」「回答」「設定」と横並びになっているタブから「回答」を選択し、「回答を受付中」の右のボタンをオンにしてください。

オフだとフォームのURLを共有しても回答できません。

 

手順8:「回答タブ」から「新しい回答についてのメール通知を受け取る」にチェックを入れる。

「回答を受付中」の上にある「」を縦にしたマークをクリックします。

「新しい回答についてのメール通知を受け取る」にチェックを入れておくことで、新着情報があるかすぐに確認できます。

 

 

手順9:質問タブを開き、フォームの題名と説明文を記入する。

質問タブをクリックして、

このとき、「設定タブ」で「メールアドレスを収集する」がオンになっていると、「メールアドレス」の欄が必須項目として表示されます。

 

手順10:「Q1. 通報者様の名前(本名またはニックネーム)」の欄を作る。

通報者の名前やニックネームを記入する項目を作ります。

説明文は必須ボタンの右にある「」を縦にしたマークをクリックすることで表示させるかどうか選択できます。

記入が終わったら、必須の横のバーをオンにしてください。

なお赤文字で「*と表示されている項目は回答が必須であることを示します。

 

手順11:「Q2. 被害者の名前」の欄を作る

誹謗中傷を受けているとみられる被害者の名前を記入する欄を作ります。

名前だけだと同姓同名がいたり、誰を指しているのかわからない場合が多いので、所属と名前はセットで記入するように案内すると、確実性が上がります。

 

手順12:「Q3. 加害者の属性」の欄を作る。

Googleフォームのラジオボタン機能を選択すると、選択結果に合わせて、続く入力欄を変更できます。

本サイトでは、個人を選択した場合はセクション2に移動、法人を選択した場合はセクション3に移動するように設定しています。

なお、選択肢によって特定のセクションに移動させるには、あらかじめ移動したいセクションを作っておく必要があります。

下記にセクションを区切る方法を記載するので、参考にしてください。

 

【セクションを区切る方法】

入力欄の右となりにある機能バーの一番下にある「」みたいなボタンを押すと、セクションを区切ることができます。

間違えた場合は「Ctrl」+「Z」で取り消すことができます。

Macbookの場合は「command」+「Z」で取り消すことができます)

 

「加害者情報が個人の場合」の作り方

加害者が個人の場合は、最低限以下の4つが不可欠です。

  1. どこの(Twitter掲示板などのプラットフォーム名)
  2. 誰が(ユーザー名・ユーザーID)
  3. どこで(具体的なURL)
  4. 何をしたか(具体的な内容)

これに「いつのことか(年月日・時刻)」を足した5つについて、設定していきます。

手順13:「Q4. 加害者情報(ユーザー名)」の欄を設定する。

誹謗中傷をしたとみられる加害者のユーザー名を記入します。

  • YouTubeであればチャンネル名がユーザー名となります。
  • Twitterであればアイコンの隣の名前がユーザー名です。
  • 掲示板などであれば「名無しの○○」みたいな名前がユーザー名です。

※たまにめちゃくちゃな文字を使っていたり、絵文字だらけのユーザー名の場合がありますが、コピペして貼り付けすることで、すべて正確な文字コードとして入力できます。

 

手順14:「Q5. 加害者情報(ユーザーID)」の欄を作る。

ユーザーIDの記入欄は

  • Twitterであれば「@以下の文字列」が該当します。
  • YouTubeであれば「チャンネル名」を記入するとよいかと思います。
  • まとめサイトなどの場合は、「通し番号」を記載するように案内するとよいかと思います。

もしもIDが表示されないサイトでの書き込みであれば「不明」と書くように案内しましょう。

仮に不明でも「URL」「日時」「内容」で照合すれば特定できます。

 

 

手順15:「Q6. 加害者情報(代表ページURL)」の欄を作る。

加害者情報URLについて、

  • Twitterの場合は、ユーザーのトップページのURL
  • YouTubeの場合は、チャンネルトップページのURL

まとめサイトの場合は、加害者本人の代表ページがないこともあります。

その場合は後述の「具体的な記述があるURL」を記入してもらうよう促すと良いかと思います。

「回答の検証」という項目をオンにして、テキスト、URLを指定すると、URL以外が記入された時にエラーメッセージを表示してくれます。

 

手順16:「Q7. 加害者情報(具体的記述の投稿日時)」の欄を作る。

具体的な投稿が行われた年月日をフォームに記入する欄を作りましょう。

投稿の年月日は、各プラットフォームから確認することができます。

直接入力も可能ですが、入力を簡単にしたり、うるう年を考慮する必要があるので、日付のフォーマットを使いましょう。

表記ブレが抑えられる効果も期待できます。

時刻の欄は、プラットフォームによっては表示されない場合があるので、分けて欄を作ります。

なお、この欄は必須にしないことをおすすめします。
(必ずしも投稿の年月日がわかるとは限らないため。)

 

手順17:「Q8. 加害者情報(具体的記述の投稿時刻)」の欄を作る

時刻の欄は、プラットフォームによっては非表示になることが多いため、年月日と別枠にしています。

また、この欄は必須にしないことをお勧めします。

(必ずしも正確な時刻がわかるとは限らないため)

 

手順18:「Q9. 加害者情報(具体的記述を表示しているURL)」の欄を作る。

具体的な投稿があるURLを記入します。

※あったほうがいいかもしれないパターン

YouTubeのチャット欄については、コンテンツのURLとは別なURLが割り当てられているので、動画や配信のURLとあわせて通報するとよいと思います。

枠が足りない場合は「通報内容(概要)」に補足で記入しておいてもらうようにすると、安心だと思います。

「回答の検証」という項目をオンにして、テキスト、URLを指定すると、URL以外が記入された時にエラーメッセージを表示してくれます。

 

手順19:「Q10. 通報内容(概要)」の欄を作る。

これまでの設問以外に共有しておくべき通報内容がある場合は、ここに記入してもらうようにします。

ここまでで具体的な誹謗中傷の内容を記載させる欄を設けなかったのは、通報者が一字一句書き込む手間を省くためと、入力している間に嫌になるのを防ぐためでした。

必要があればここに加害者の具体的な投稿を記入するように案内するとよいかと思います。

特に動画や音声の証拠を持っている人向けに、「動画・音声の証拠あり」を記載させるとよいと思います。(もしくは欄を増やす)

 

手順20:「Q11. 添付ファイル(PDFやスクリーンショットなど)」の欄を作る。

物証として裁判の際に提示できるデータを添付する欄を作ります。

本サイトでは、画像とPDFとしていますが、必要があれば動画、音声なども添付できるように設定するとよいと思います。

デフォルトでは全ての拡張子を受付してしまうので、縦型の「...」マークから、形式を指定するをオンにして、添付できるデータ形式を制限しましょう。

※ただし、保存先はGoogleドライブなので、無料枠で使用できる15GBを超過すると通報内容が保存されません。

どのくらいの容量を添付させるかあらかじめ検討しましょう。

 

手順21:「添付ファイルの例」の欄を作る

個人が加害者である場合は、下の画像のように情報を集める必要があります。

画像はANYCOLOR Inc.より攻撃的行為または誹謗中傷行為に関する通報 | ANYCOLOR株式会社(ANYCOLOR Inc.)(https://www.anycolor.co.jp/report)のページから引用しています。

基本的には、下記画像でいうYouTubeの項目のように

  1. どこに(記事のURL)
  2. 何を記載したか(内容)
  3. どこの(代表URL)
  4. 誰が書いたか(掲載者)

この4項目が網羅されていればよいかと思います。

注意点(ものすごく大事な点です!絶対に読んでください!)

誹謗中傷の第一原因者」と、「第一原因者の投稿内容を拡散した者」は別人格となるので、誹謗中傷の第一原因者に対して開示請求したい場合は、

  1. 元動画のURL
  2. 動画の内容(スクショより、できるだけ動画そのものであるほうが望ましい)
  3. 元動画の発信者のチャンネル(代表URL)
  4. 元動画の発信者のユーザーネーム

この4つが必要です。

暴露系YouTuberと呼ばれるタイプは、暴露した内容を含む配信が終わると即座に非公開にして証拠を隠滅することが圧倒的に多いため、特に迅速に上記の1、2の内容を記録する必要があります。

暴露配信の切り抜き動画で、暴露者本人に対して開示請求できるかどうかは、おそらく裁判で意見が分かれる可能性が高いです。

そのため、確実に元動画のURLと動画の内容を記録しましょう

 

手順22:「セクションの終了条件」を「フォームを送信」に設定する。

ここまで入力が終わったら、「3セクション中3個目のセクション」と書かれている場所の直前まで来ているはずです。

セクションの終わりには、セクション終了時にどうするか選択することができます。

本サイトでは、第2セクション終了時に「フォームを送信」と設定しています。

こうすることで、「加害者が個人の場合」の入力が終了した時点でフォームを送信できます。

「加害者が法人の場合」の入力と分けることができるので、このフォームの設定は忘れずに行ってください。

 

「加害者情報が法人の場合」の作り方

以降は「法人が加害者である場合」のフォームの作り方を紹介します。

ほとんど「個人が加害者である場合」と作りは同じなので、詳細な説明は割愛し、手順のみの解説とします。

手順13:「Q4. 加害者情報(サイト名)」の欄を作成する

 

手順14:「Q5. 加害者情報(具体的記述の投稿時刻)」の欄を作る

 

手順15:「Q6. 加害者情報(具体的記述を表示しているURL)」の欄を作る。

 

手順16:「Q7. 加害者情報(具体的記述を表示しているURL)」の欄を作る。

 

手順17:「Q8. 通報内容(概要)」の欄を作る

 

手順18:「Q9. 添付ファイル(PDFやスクリーンショットなど)」の欄を作る

 

手順19:「添付ファイルの例」の欄を作る。

法人が加害者である場合の添付ファイルの例は、個人が加害者である場合の例とほとんど同じです。

基本的には、下記画像でいうYouTubeの項目のように

  1. どこに(記事のURL)
  2. 何を記載したか(内容)
  3. どこの(代表URL)
  4. 誰が書いたか(掲載者)

この4項目が網羅されていればよいかと思います。

法人が相手なら最低限、1、2のように、どこに何を掲載したかがわかれば責任を問うことは可能になります。

 

送信テスト結果

実際にテスト送信するとこんな感じでフィードバックされます。

設定タブで指定した文言と、別な回答を送信するリンクが表示されていればOKです。


f:id:protect-honor:20221110233051j:image

 

フォームの掲載方法

手順1:「送信」ボタンからリンクURLを取得する。

フォームの作成が終わったら、回答してもらうためにリンクを共有しましょう。

画面の右上に送信と書かれたボタンがあります。

送信をクリックすると、フォームのURLをメールに添付したり、共有リンクを取得することができます。

リンクを取得する場合には、URLを短縮する機能を使うと、Twitterなど、文字数制限があるプラットフォームにも載せやすくなります。

 

まとめ

今回はGoogleフォームを例に、通報フォームの作成方法を紹介しました。

使いやすければ、必ずしもGoogleフォームである必要はありませんので、お好みのプラットフォームで実践してもらえればと思います。

 

重要なのは、誹謗中傷の加害者に、これ以上好き勝手させないことです。

誹謗中傷の加害者に、自分がしていることが誹謗中傷であるという自覚はありません。

ですが、自分の身元が割れるかもしれないという意識があると、途端にその手が止まる傾向もあります。

その傾向を逆手にとって、通報システムの存在を広く認知させることで、誹謗中傷に対する実行力の高い抑止効果が期待できます。

 

今回の記事によって誹謗中傷の加害者も被害者も少なくなってくれたらとても嬉しいです。

皆さんの活動ライフに平和が訪れることを祈ります。

 

個人でもできる誹謗中傷の"予防"と"通報"方法

皆さんこんにちは。

このサイトは拡散されればされるほど、誹謗中傷が減っていくことを目指して日々執筆を行っています。

その最たる原理が誹謗中傷の抑止力の作り方を普及することにあるためです。

今回は、個人レベルでも実践可能な、誹謗中傷対策について、実例を参考に考えてみましょう。

というのも、企業や事務所に所属している場合、大抵は事務所が誹謗中傷対策を行っていますが、個人で活動している場合、誹謗中傷に対して、無防備になっていることが多いのです。

事務所所属という状態がいわばウイルスバスターみたいなもので、それがない個人勢は、極めて脆弱性が高い状態にあると言っても過言ではありません。

今回のゴールは誹謗中傷の抑止と早期解決ですが、誹謗中傷の被害者になった時にとる具体的な行動は、ほとんどがTwitter掲示板に対する開示請求と加害者への損害賠償請求になります。

総務省で公開している開示請求についてのガイドラインを先に読んでおくことで、今回の話題の理解が簡単になると思いますので、流し読みでも良いので一読してみてください。

総務省|インターネット上の違法・有害情報に対する対応(プロバイダ責任制限法)(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/ihoyugai.html)

総務省|インターネット上の違法・有害情報に対する対応(プロバイダ責任制限法)|プロバイダ責任制限法Q&A(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/ihoyugai_04.html)

 

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実際の裁判

発信者情報開示請求控訴事件|裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan(https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=91469)

www.courts.go.jp

 

裁判要旨

(全文PDFより)

本件は、氏名不詳者(本件投稿者1及び2)により、ツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれるメッセージ等を投稿することができる情報サービス)上に、別紙投稿記事目録1及び2記載の記事(原判決別紙投稿画像目録記載の画像を含む。)が投稿されたことにより、原判決別紙被控訴人イラスト目録記載の各イラストに係る被控訴人の著作権及び著作者人格権並びに被控訴人の名誉権及び営業権が侵害されたことが明らかであると主張して、被控訴人が、ツイッターを運営する控訴人に対し、令和3年法律第27号による改正前の特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき、別紙発信者情報目録記載の情報の開示を請求する事案である。

原判決は、①別紙発信者情報目録記載1及び2の情報のうち、令和2年4月3日午前零時(日本標準時)以降のもので、別紙投稿記事目録記載の各投稿がされた時以前のログインのうち最も新しいもののIPアドレス並びに同IPアドレスが割り当てられた電気通信設備から控訴人の用いる特定電気通信設備に上記ログインに関する情報が送信された年月日及び時刻、並びに②別紙投稿記事目録1のユーザー名欄記載のアカウントの管理者の電話番号及び別紙投稿記事目録2のユーザー名欄記載のアカウントの管理者の電子メールアドレスの開示を求める限度で被控訴人の請求を認め、その余の請求をいずれも棄却した。

控訴人が、原判決における敗訴部分について不服があるとして、控訴を提起した。 

 

裁判で提出された証拠ツイート

裁判で提出された実際のツイート

 

関連する法律のおさらい

平成十三年法律第百三十七号

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法

第一章 総則

(趣旨)

第一条 この法律は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利について定めるとともに、発信者情報開示命令事件に関する裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 特定電気通信 不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下この号及び第五条第三項において同じ。)の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)をいう。
 特定電気通信設備 特定電気通信の用に供される電気通信設備電気通信事業法第二条第二号に規定する電気通信設備をいう。第五条第二項において同じ。)をいう。
 特定電気通信役務提供者 特定電気通信役務(特定電気通信設備を用いて提供する電気通信役務電気通信事業法第二条第三号に規定する電気通信役務をいう。第五条第二項において同じ。)をいう。同条第三項において同じ。)を提供する者をいう。
 発信者 特定電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を記録し、又は当該特定電気通信設備の送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力した者をいう。
 侵害情報 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者が当該権利を侵害したとする情報をいう。
 発信者情報 氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。
 開示関係役務提供者 第五条第一項に規定する特定電気通信役務提供者及び同条第二項に規定する関連電気通信役務提供者をいう。
 発信者情報開示命令 第八条の規定による命令をいう。
 発信者情報開示命令事件 発信者情報開示命令の申立てに係る事件をいう。
〜中略〜
第三章 発信者情報の開示請求等

(発信者情報の開示請求)

第五条 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対し、当該特定電気通信役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報のうち、特定発信者情報(発信者情報であって専ら侵害関連通信に係るものとして総務省令で定めるものをいう。以下この項及び第十五条第二項において同じ。)以外の発信者情報については第一号及び第二号のいずれにも該当するとき、特定発信者情報については次の各号のいずれにも該当するときは、それぞれその開示を請求することができる。
 当該開示の請求に係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
 次のイからハまでのいずれかに該当するとき。
 当該特定電気通信役務提供者が当該権利の侵害に係る特定発信者情報以外の発信者情報を保有していないと認めるとき。
 当該特定電気通信役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る特定発信者情報以外の発信者情報が次に掲げる発信者情報以外の発信者情報であって総務省令で定めるもののみであると認めるとき。
(1) 当該開示の請求に係る侵害情報の発信者の氏名及び住所
(2) 当該権利の侵害に係る他の開示関係役務提供者を特定するために用いることができる発信者情報
 当該開示の請求をする者がこの項の規定により開示を受けた発信者情報(特定発信者情報を除く。)によっては当該開示の請求に係る侵害情報の発信者を特定することができないと認めるとき。
〜中略〜
第十八条 この法律に定めるもののほか、発信者情報開示命令事件に関する裁判手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
〜附則省略〜

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 | e-Gov法令検索(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=413AC0000000137)より引用

 

法律の解説

開示請求できる条件って何?

第四条一項を判例のケースに訳すと

e-govでは第五条一項とありますが、正確には第四条一項です。(どこかでズレているっぽい。)

難しい表現や、用語が沢山ある難解な条文なので、今回引き合いに出した判例をベースに、私の方で条文を日常会話っぽく訳してみました。

ちなみに、特定発信者情報と言う時は、そのSNSサービスを利用した際に残るログイン情報とかアカウント情報のことです。

単に発信者情報と言う時は、総務省令で言う、氏名、住所、電話番号、電子メールアドレス、IPアドレスなど、私たちが日頃よく使う個人情報のことを指します。

これらを総称して、個人を特定するに資すると表現されています。

多少強引に訳しているので、例外のパターンはあるかもしれませんが、法令の理解には役に立つはずです。

 

第三章 アンチの個人情報が知りたいとき等
(アンチの個人情報が知りたいとき)

第五条 アンチによるツイートの送信と拡散によって誹謗中傷を受けた人は、Twitterのサーバーを持っているTwitter社に対して、

「アンチの本名と住所、電話番号とかメールアドレスとかIPアドレスを見せろ!」

と言うことが出来ます。

ただし、条件があります。

アンチの本名や住所みたいな情報は、次の一、二のどっちにも当てはまるときに開示請求できます。

三には当てはまらなくても大丈夫です。

逆に、アンチのログイン情報とか、どうやってアカウントを作ったのかみたいな情報は、次の一、二、三の全部に当てはまるときじゃないとだめです。

 

 アンチによるツイートによって、誹謗中傷被害を受けたことが明らかであるとき。

 アンチの個人情報が損害賠償を請求するために必要である場合や、その他の、アンチの個人情報の開示をすべき正当な理由があるとき。

 次のイからハまでのいずれかに当てはまるとき。

 Twitter社のサーバーの中にしかアンチの個人情報が保存されていないとき。auでもソフトバンクでもなんでもいいけど、通信回線業者のプロバイダに個人情報が残っているなら、そっちを調べてください。

 Twitter社が保有するアンチのアカウント情報に(1)(2)以外で、総務省令で定める個人情報があるとき。

(1) ツイートを発信したアンチの氏名と住所

(2) Googleアカウントとか、Facebookのアカウントとか、別なサービスと連携しているなら、アンチが使っているそのサービスの情報。

 本名とか住所みたいな個人情報を開示して調べてみたんだけど、蓋を開けたらなんにも書かれてなくて、具体的にどこの誰なのかよくわかんなかったとき。

 

今回のケースでカンタンにまとめると、以下のようになります。

  1. Twitterにいるアンチのツイートで心が傷つきました。
  2. だから損害賠償を請求したいんだけど、相手がどこの誰だかわかりません。
  3. なので、Twitter社さん。アンチの本名とか住所を開示してください。登録されてなかったら、電話番号とか、メールアドレスとか、IPアドレスみたいなもっと他の情報も見せてください。
  4. ちなみに、フレッツ光とかau光とか、ソフトバンク光みたいな通信回線のサーバーにはデータが残ってなくて、Twitter社さんにしかアンチの個人情報が残ってないみたいなので、アンチのアカウントの色々な情報をもっと開示してください。

4項目でまとめるとこういう感じの条文です。

特に氏名、住所、電話番号、メールアドレス、IPアドレスをはじめとした発信者情報はかなり開示のハードルが低いことがお分かりいただけると思います。

さらにポイントとなっているのは、SNSアカウントに結びついた加害者のログイン情報を開示できる点です。

例えばTwitterを利用するためには、メールアドレスや電話番号でアカウント作成すると思います。

加害者がこのアカウントをどんな個人情報を使って作ったのかを確実に知るための法律なんですね。

なので、いざ開示請求すれば、簡単にどこの誰か分かるのです。

今回はTwitterを例に出しましたが、原理原則はYouTubeでもTikTokでも、掲示板でも同じです。

 

 

現状の誹謗中傷対策の重大な問題点

被害者が自ら証拠集めをしなければならない

ここまでで、誹謗中傷を受けた場合の法令上の開示請求のルールについて紹介しました。

ただ、現在の制度や法律に則して誹謗中傷に対応しようと思うとき、重大な問題点が一つあります。

それは、被害者が自分で証拠を集めなければ、開示請求も損害賠償請求もできないことです。

ただでさえ誹謗中傷で精神的苦痛を受けている状態で、さらに、その証拠を集めるために、自分の手足を動かさないといけないのです。

場合によってはエゴサーチをしたり、アンチの巣窟になっているWebページを閲覧する必要があります。

当然、自身に関するものすごくネガティブなコメントを見つける可能性が高くなり、証拠を集める段階でさらに精神的苦痛を受けることになります。

そうしてでも証拠を集めないと裁判すら起こせないのが、この国の本当に悪いところだと思います。

 

開示請求をする裁判「民事」と、損害賠償請求をする裁判「刑事」は別もの

これ、よくごちゃごちゃになる話なので最後まで見てください。

開示請求のための裁判は、「民事」です。

この民事裁判に勝つことで、初めて加害者の個人情報が判ります。

ここまででだいぶ長い道のりになることが多いのですが、まだ、犯人が分かっただけなんですね。

そして、ここからようやく「刑法230条1項,刑法230条の2第1項」に基づいて名誉棄損罪で加害者を訴える裁判が始まります。刑法 | e-Gov法令検索(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045)

両方いっぺんに行われているわけではないんですね。

これ、別々に裁判が行われているので、調べてみると専任の弁護士が変わったり、費用が二重三重になったりすることもあるそうです。

被害を受けているのは被害者なのに、被害者ばかりがたくさん弁護士費用や裁判費用を払うことになることもあるんですね。

いい加減、法改正しませんか?と言いたいところです。

 

対抗手段は「みんなで解決する」が合言葉

現状のルールに則せば裁判は被害者が起こすしかありません。

弁護士費用も、裁判費用も被害者が負担することになるかもしれません。

しかし、証拠集めは必ずしも自分一人で行う必要はありません

仲間の手を借りることでも証拠を収集することは可能です。

ここからは、大手芸能事務所の取り組みから、「誹謗中傷の加害者情報を通報によって収集する方法」を考えていきましょう

 

大手事務所の対応策の紹介

大手芸能事務所の中から今回は

  • 実写タレント・アーティストの在籍する事務所
  • バーチャルタレントが在籍する事務所

このそれぞれを見ていきましょう。

 

FORM JAPAN | フォルムジャパン

FORM JAPANでは事務所として誹謗中傷対策を行う旨を公表しています。

リンクに掲載されているとおり、タレントに対して誹謗中傷があった際は、プロバイダ責任制限法をもとに、開示請求、損害賠償請求を行うことを公表することで、一定の抑止力となっているようです。

弊社所属タレント・アーティストに対する誹謗中傷に対する取り組みについて | 名古屋 芸能プロダクション | FORM JAPAN フォルムジャパン | (http://www.form-japan.com/2020/06/1094/)

www.form-japan.com

 

にじさんじ(ANYCOLOR Inc.)

大手VTuber事務所ANYCOLOR Inc.が運営するにじさんじというグループがあります。

ここでは、にじさんじの運営母体であるANYCOLOR社で、所属VTuberへの誹謗中傷対策のためのチームが組まれています。

具体的な取り組みとしては前述のFORM JAPANと同様に誹謗中傷に対しては開示請求、損害賠償請求を行うとしています。

ANYCOLOR社ではそれに伴い、誹謗中傷の証拠を収集するために、視聴者から情報収集を行うための専用プラットフォームを用意しています。

具体的な通報方法も記載されているので、いろいろな誹謗中傷対策として応用ができそうです。

攻撃的行為または誹謗中傷行為に関する通報 | ANYCOLOR株式会社(ANYCOLOR Inc.)(https://www.anycolor.co.jp/report)

 

www.anycolor.co.jp

 

個人でもできる誹謗中傷予防と通報方法

上記の事務所の取組にならい、個人でも誹謗中傷の通報システムを用意し、視聴者から情報を募る仕組みを作っておくことは、問題解決の早道になります。

効果はそれだけではありません。

このシステムがあるということが広く知られているならば、誹謗中傷の加害者に対してこう忠告することができます。

「お前のことをみんなが見てるからな?」

このような暗黙のメッセージが事前に伝われば、誹謗中傷の加害者は、もしかしたら自分の書き込みを通報する人がいるかもしれないと躊躇するかもしれません。

たとえ、ターゲットが普段見なさそうなサイトで誹謗中傷の書き込みをしようとしても、三者による通報のリスクが頭によぎれば、それが誹謗中傷の抑止力になる可能性は大いにあります。

それでも書き込んでしまう人も中にはいるかもしれませんが、通報システムを事前に周知している前提なら、被害を受けた際に周りの人が解決に向けて動いてくれるようになります。

少なくとも誹謗中傷の対応をたったの一人でやらなければならないといった不安感や心細さは薄まるのではないでしょうか?

 

実践に向けて利用できそうなサービス

さて、ここからは実際のサービスを例に、どのようにシステムを作っていくか、考えてみましょう。

以下の3つの方法は個別に使用することももちろんできますし、複合的に使うこともできます。特に、周知・広報能力の高いWiXに通報用のGoogleフォームを設置することで、Google検索からのアクセスも簡単になります

ご自身の環境に合わせて組み合わせてみるとよいでしょう。

 

通報用メールアドレス

料金:無料で取得できるものもある

手軽さ:高

周知力:低

導入が最も簡単な方法の一つは、通報を受け取るための専用のメールアドレスを用意することです。

メールアドレス取得にかかる時間は短ければ5分程度ですし、入力する情報も名前や電話番号程度のものが多いので、手軽に取得が可能です。

取得したメールアドレス宛に、誹謗中傷の証拠となるスクリーンショットや加害者情報を送ってもらうことで、情報収集ができます。

Googleのメールアドレスを新規に取得すれば、後述のGoogleフォームも無料で使うことができます。

添付ファイルとして画像や軽めの動画を一緒に送ることができます。

SNSサービスのDM(ダイレクトメッセージ)で通報を受け取ることと比べると、若干手軽さは低いですが、情報がひとつのプラットフォームに集中することを防ぎ、正確な送受信日時を把握するうえでも証拠能力が高い方法といえます。

また、もらった通報の内容から情報を整理するときに、メールボックス内の検索機能や、ラベル分け機能を使うことができるので、加害者ごとの情報に大別し、誰からどんな被害を受けたのか整理することもできます。

欠点としては、ユーザーがどこに通報すればよいのか探すときに、「このメールアドレスに送ってください」という情報がなかなか周知されずらい点が挙げられます。

その場合は下記の方法も織り交ぜて対応してみるとよいでしょう。

 

Googleフォーム

料金:無料

手軽さ:中

周知力:中

Googleフォームは、Googleのメールアドレスを取得していれば誰でも利用可能なクラウドサービスです。

難しい設定なしで、お問い合わせフォームのような簡易的な入力フォームを作ることができるのが最大の特徴です。

フォームの設定を変えれば画像や動画の送信も可能なので、より多角的な情報を受け取ることが可能です。

また、メールアドレス単体では送信が難しい、重めの動画ファイルも、Googleフォームからであれば1回あたりの送信で送付可能なファイルサイズが大きいので、動画ファイルの送受信にも有効と考えられます。(ただし、受け取った動画はGoogleドライブに保存されるため、実質は受け取れるデータ量が15GB程度と上限があるので注意してください。)

ちなみに、本サイトで試しにフォームを制作してみました。

ANYCOLOR社の取り組みを参考にフォームを組んでいるので、ぜひ、個人での通報フォームの制作に役立てていただけると幸いです。

誹謗中傷に関する通報フォーム(https://forms.gle/LL93PoMPmrodrjXG6)

forms.gle

 

WIX

料金:無料で取得できる(一部機能は有料)

手軽さ:低

周知力:高

Wix.com(ウィックス)は、世界で1億人以上が利用するドラッグ&ドロップのホームページ作成ツールです。

基本的には誰でも無料で利用でき、SEO対策もWiXのサイト内でできるので、コンテンツの周知力が高いことが特徴です。

関連サイトへのリンクや連絡先としてメールアドレスを登録できるので、誹謗中傷の情報を通報してもらう宛先として利用することもできそうです。

ただし、実際に利用可能にするために様々な設定をしなければなりません

誹謗中傷を受けている真っ最中だったり、精神的に弱っている局面でこれらの設定を行うのは正直しんどいと思います。

転ばぬ先の杖として、平常時に事前に作っておくとよいかと思います

 

通報システムの副次的効果

「ファンネル」させないことでファンを守る

「ファンネル」とは、元ネタは機動戦士ガンダムシリーズに登場する遠隔射撃武器のことを指します。

使用者の意思によって動き、本人に代わって相手を攻撃する性質があることから、転じて、活動者のファンが、アンチに対してSNS上で反論するなどの行為として使われることがあります。

この行為は一見すると問題解決のためにたくさんの人が働きかけているように見えます。

しかし、残念ながら中傷合戦に発展してしまうケースが非常に多く、場合によっては、その活動者の周りの民度が低いなどのレッテルを貼られてしまうこともあります。

そうならないためにも、誹謗中傷を受けた場合、活動者は、ファンに対して、

「むやみに反論はせず、誹謗中傷の証拠集めを手伝って欲しい」

と伝えましょう。

そして、前述の通報手段を使い活動者とファンで連携し、問題解決のために証拠集めを行いましょう。

そうすることで活動者は、対外的な二次被害を出さないだけでなく、ファンとの一体感を損なうことなく素早く問題を解決することができます。

 

まとめ

ネット上の書き込みに対して開示請求を行うための法律やそれにかかる実際の裁判を紹介しました。

また、個人で配信者、YouTuber、ないしはVTuberをしている場合にも有効と考えられる、誹謗中傷の予防と通報手段について、大手事務所の取り組みを参考に紹介しました。

いかがでしたか?

よく、人の目が多い地域では犯罪発生率が低いというデータを目にすることがあるかと思います。

これについては同じことがネット上でも言えます。

悪い書き込みをしている人がいないか見ている人がいる、という空気感があるだけで、誹謗中傷の書き込み発生率はぐっと変わります。

多くの人に今回紹介した対策法を実践していだけると、それだけ相対的に誹謗中傷の予防を強固にすることができます。

今回の記事が社会的に強い誹謗中傷予防の一助となれば幸いです。

 

それでは今回はこの辺で。

また次回の投稿でお会いしましょう。